内海彩建築設計事務所

アーブル自由が丘

所在地
東京都目黒区
用途
共同住宅+店舗
建築主
藤屋建材合資会社
構造
桜設計集団構造設計室、構造設計協力:イソノ設計室
設備
長谷川設備計画
照明
フォーライツ
植栽
スタジオヴィーゼン
サインデザイン協力
川島真由美建築デザイン、田端鉄平
施工
轟組
「アーブル自由が丘」のクライアントは、かつて自由が丘駅近くで材木店を営んでいたが、駅前開発に伴い現在の場所へ移転したと伺っている。そこに数棟のアパートを建設し経営してこられたが、老朽化に伴い建て替えプロジェクトがスタートした。
敷地の半分以上は都市計画道路予定地で、目黒区では3階建てまで可能だが、高さ10m以下、構造は木造・鉄骨造等に限定される。クライアントには材木商というルーツを何らかの形で残したいという想いもあり、最終的に、1階は耐震壁不要でスパンを飛ばせる鉄骨造、2,3階は在来木造でコストを抑え、3階床の一部にCLTを用いることとした。 外壁は高知・四万十産スギの下見板貼で約50mのファサードを木質化し、交差点に面して”木のまちかど”を創り出した。バルコニーは住空間の延長としての利用に加え、外壁材の劣化を防ぐ庇の役割も果たす。
共同住宅はオーナー住戸を含め全12戸。貸室はワンルームと水回りやキッチンをシェアするタイプの貸室が混在し、計22室、加えて入居者同士の交流や在宅ワークの場としても使える共用ホールを設けている。
1階は3つのテナント区画が道路に面して雁行する。前面道路の歩道は電柱や街灯があって歩きにくく、それを補う形で広い軒下を設けた。軒下空間は店ごとのまとまりを持ちつつ緩やかに連続し、植栽が道からの適度な距離感を創り出す。2,3階の入居者には1階飲食店と連携したサービスも提供され、テナントエリアも住まいやワークスペースの延長のように感じられる仕組みとなっている。「個室」と「街」の間の空間的なグラデーションが、多様な住まい方を可能にし、コロナ以降、急速に増えてきた多様な働き方を受けとめていくだろう。従来、共同住宅内にとどまっていた住人の暮らし・仕事・交流が街に溶け出し、街を変えていく―自由が丘に生まれた木のまちかどから、そんな未来がはじまることを期待したい。

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